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スリランカの首都コロンボ郊外のケラニヤにある UNIVERSITY OF KELANIYA | Faculty of Computing & Technology キャンパスを会場に Sri Lanka Inter-University "Make-A-Thon" Competition for 3D Printed Assistive Medical Technology が開催されました (2025.02.22-24)

revised: 2025 / 03 / 07

INFORMATION

2025年2月22日から3日間にわたり,スリランカの首都コロンボ郊外にある
UNIVERSITY OF KELANIYA | Faculty of Computer & Technology Campus を会場に開催されたインクルーシブ・メイカソンをサポートしました.
今回,スリランカでの開催は大学対抗の形をとり,9大学から13チームが参加しました.
各大学から領域を横断したチーム構成でのエントリーが要請されており,
会場ではケラニア大学医学部の作業療法学科をはじめとするセラピスト養成学科の学生が
2名ずつ各チームにボランティアで入るなど運営面で非常に特筆すべき態勢が取られていて感心しました。

Sri Lanka Inter-University
"Make-A-Thon"
Competition for 3D Printed Assistive Medical Technology

2025年2月22日 (土) - 24日 (月)
会場:UNIVERSITY OF KELANIYA | Faculty of Computing & Technology Campus, Kelaniya, Sri Lanka

主催:Asian Development Bank (ADB)
   University of Kelaniya: Faculty of Computing & Technology, Faculty of Medicine
   FabLab Shinagawa
協賛:Japan Fund for Prosperous and Resilient Asia and the Pacific (JFPR)


このメイカソンの各チームとドキュメンテーション


Day0 : オンラインセミナー

今年のメイカソンは「SOUTH ASIA REGIONAL MAKEATHON」と題され,ブータン,ネパール,スリランカの3カ国で開催されることになりました.
3Dプリンタなどで自助具を作成する活動,インクルーシブ・メイカソンではどのようなことを行うのかを事前に共有するために 2025年1月31日,参加者向けにオンライン・セミナーを実施しました.


Day1:開会式

開会式には会場となったケラニア大学の学長(医学部のご出身だそうです)はじめ,多くの学校関係者がいらっしゃり,挨拶が多くて大変だなと思いましたが,素晴らしいご挨拶ばかりで感激しました.

同大学の Prof. Nilanthi de Silva 学長.「週末は家族のための時間でいつも休みにしてるけど,こればかりは別」というコメントが.ありがとうございます.

今回メイカソンの運営リーダーを務めた Dr. Pradeep Samarasekere.米国留学時にはスタートアップ経営の経験も.

ADB の Social Economist で,会場となった校舎の建設プロジェクト時から同大学とお付き合いのある林 遼太郎さん.

Faculty of Computing & Technology 前学部長の Dr. Chamli Pushpakumara.

Faculty of Medicine 学部長の Professor Madawa Chandratilake

ホスト役として医学部側の窓口を務めた Dr. Dinushee Atapattu.テック側の責任者を務めた Dr. Shakya Bandara とブータンで開催されたメイカソンに参加されました.

ファブラボ品川ディレクターの林から自身の経歴を織り交ぜたインプットトークも

しっかりMCも入ってました.母国語のシンハラ語と英語の逐次通訳でした.


Day1 : ニードノウアの紹介/インタビュー/チームビルディング/アイディエーション

このメイカソンでは1日目に実施されるニードノウアへのインタビューを重視しており,多くの時間を割いています.ニードそのものにとどまることなく,日々の過ごし方やキャラクターなど,お互いのコミュニケーションを通してエスノグラフィックな視点でもニードノウアを捉えることにより,プロトタイプの精度をあげることができるようになります.

アイスブレイクを兼ねて,各チームのチア(掛け声)とチーム名のプレートを作る作業を行います.これは昨年開催されたブータンでの方法を踏襲したもので,チームビルディングに効果を挙げています.

アイディエーションの際は過去事例にあたることも重要です.昨年英訳した「事例集」から類似事例にあたる参加者たち.

インターディシプリナリーという言葉で表現されていましたが,普段交流することがない学部を超えた意見交換は若い世代にも大きなインパクトがあるようです.

OD (Occupational Design) Worksheet を元にアイデアスケッチを行い,プロトタイプにおけるニードへの精度を高めます.


Day2 : プロトタイピング

このメイカソンでは各チームの進捗具合が雰囲気でわかるよう,なるべく一つの場所で作業を進める形を取っています.ほかのチームから協力を得たい場合なども気兼ねなくコンタクトを取れたりすることも大きなポイントです.
スリランカではチームでのワークを進める部屋の隣にプロトタイピング・ルーム(24時間対応)を設置し,機器を用いた制作はそちらで行う形をとりました.各チームに3Dプリンタが割り当てられ,公平性を担保していましたが,3Dプリンタを所有するチームは使い慣れた機器を持ち込んでもいました.
スリランカ国内の3Dプリンタ機器関連企業であるThrimana社がスポンサーしていた関係でそれらを見られたことも参考になりました.

プロトタイピングルームではニードノウアのフィッティングをしながら談笑する姿が多く見られました.

Bambu Lab 社の 3D プリンタを自ら持ち込むチームも.University of Moratuwa (スリランカの MIT と呼ばれているとか) から参加した 3D プリントスタートアップの「RYSERA」.平均年齢は22歳を切るらしいですが,ほかのチームより技術やプレゼン力が頭ひとつ抜きん出ていました.

プレゼン資料にCAE解析の資料を添付していたチームの3Dプリント.Solidworksを活用しているチームが多かったようです.

2日目の夕方には中間発表の時間も.各チームしっかり資料を作り込んでいましたが,並行して Fabble にドキュメンテーションも課していたので大変だったと思います.

スリランカのメイカソンでは運営側の意向もあって各チームにボランティアで入ったセラピストからのアドバイスにより ICF に基づいた評価など作業療法にのっとった進め方がきちんとされていたことが特に評価されるところです.他国開催でも真似していきたいところですが,各国でセラピストの絶対数に大きな隔たりがあるのでその辺りをどのように乗り越えていけるかが運営側の課題になります.

メインルームの隣に設けられたプロトタイピングルーム.24時間対応を謳っており,学生パワーで連日の徹夜組も.テックチームのみなさんはお疲れ様でした!


Day3 : プロトタイピング

最終日は午前中でプロトタイピング,ドキュメンテーションの作業を終了し,午後は各チームのプレゼンテーションの時間となります.プレゼンテーション後の審査を経て受賞チームを決めますが,このメイカソンではアチーブメントの優劣を競うことが目的ではありません.

ほぼ最終のプロトタイプでニードノウアによるフィッティング.

発表前ギリギリまで調整に取り組みます.

このチームは頑張ってボルトナットやスプリングも3Dプリントしていました.上腕の動きだけで様々なものをカットするための自助具を作成しました.

3日目の午前中,スリランカ滞在中だった元WFOT会長 (2002-2008) Kit Sinclair さんが会場を訪問され,意見交換することができました.


Day3:プレゼンテーション/閉会式

定員1,000名のオーディトリアムでファイナル・プレゼンテーションと閉会式が行われました.
13チームあるのでプレゼンだけで2時間以上かかります.審査にも熱が入りました.
閉会式では大きなステージでケラニア大学医学部のスリランカ古典舞踊部員たちによるパフォーマンスが繰り広げられました.
表彰式及び来賓(政府関係者、日本大使館,JICA,ADB現地事務所長など)からのご挨拶がありましたが,閉会後も記念撮影が続いたり名残惜しかったです.
参加されたニードノウアのみなさんも最後まで楽しく過ごされたようで安心しました.このメイカソンは医学部のサポートがあったことにより,特にニードノウアの方々に対するケアがとても行き届いていました.特筆に値します.
ファイナルプレゼンテーションや閉会式の様子は写真を撮ることができなかったのでメディアで紹介されているものをご覧になってください.

これまで小さな規模からコツコツと20回を超えるメイカソンを開催してきた私たちにも得るものが大きいとても貴重な機会でした.

閉会式後,学長とのお話の中で自分たちでしっかりと続けていきたいというお言葉があったので今後に大きな期待を寄せています.


UNIVERSITY OF KELANIYA | Faculty of Computing & Technology キャンパスについて

会場となった情報工学部のキャンパスはADBからの補助金で建設されたとのことで,基本的に高層棟の上層部に教室と研究室が入り,低層部に共用部が置かれている計画です.一部低層棟となる機械工作室なども設けられているほか,スタッフの居住棟も配置されています. 少し開かれた中庭をうまく取り込んだ計画で,人が散在する様子がとても素晴らしかったです.

メインゲート付近から高層棟をみる.

メインゲート付近からスタッフ宿泊棟をみる.

オーディトリアムへの階段

メインエントランスの階段を登ったところにあるフォワイエ.吹き抜けとして扱われており,空間の抜けもよい.


メディア掲載

英語,シンハラ語を問わず多くのメディアに取り上げられています.
Revolutionizing Disability Support! Sri Lanka’s First Assistive Tech Contest Sparks Innovation! (Commonwealth Union)


ファブラボ品川およびコクリハブでは,ご要望に応じた内容の各種セミナー・ハンズオンをご提供しています.お問い合わせフォームからご連絡いただけましたら折り返し担当者からご連絡差し上げます.