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私たちの Make-a-thon (メイカソン) とは?

revised: 2019 / 02 / 18

SERIES
INFORMATION

ファブラボ品川ではともにつくり、ともに育むインクルーシブな社会を実現していくために一般社団法人ICTリハビリテーション研究会と連携して定期的にメイカソンを開催しています。
ここではメイカソン (Make-a-thon) とは何か概要をご紹介します。

Make-a-thon (メイカソン) とは、Make (つくる) とマラソンを掛け合わせた造語です。

私たちのメイカソンでは「障害のある方やその支援者(Need Knower)」をメンバーに位置付け、
6〜8人程度のチームで試作品作りに挑みます。
ニーズの抽出からアイディア出しやデザインをともに行い、実際にものをつくり、プレゼンテーションします。発表するまで1日で行うものをミニメイカソンと位置付け、最大3日ほどかけて開催します。

つくり上げたデータは、ものづくりの物語とともにインターネット上でオープンにします。
時間と空間を超えて「つくる、試す、考える、つくる」の循環を再現し、育んでいきます。
2020年5月に80人規模・3日間での開催を目指し、各地で芽を育てていきたいと考えています。
テクノロジーを活用し、「日本でつながり」「世界でつながる」を実現します。

ミッション

「その困難を創造力に」

「共創」と「オープンイノベーション」

デジタルファブリケーション*
による「ともにつくり、ともに育む」
「データ」と「インクルーシブな地域社会」

Make the world a better place.
*デジタルファブリケーション:インターネットにつながったデジタル工作機械によるものづくり

Make-a-thon | まずはともにつくる

福祉に役立つものづくりを、当事者を Need Knower としてチームの一員に位置付けて行います。
3D プリンタや IoT など、デジタルファブリケーションも活用します。
とことん、「その人のニーズを満たすもの」にこだわってつくります。
つくったデータと物語を、ものづくりとものがたりの統合プラットフォーム「Fabble (https://fabble.cc/)」で公開します。

Re-Design Café | 地域でともに育む

メイカソンで作った自助具が「データ」だから 場所や時間を超えて再現し育むことができます。
つくりっぱなしにしないで地域の方々と実際に検証しています。
メイカソンに参加できなかった障害の当事者の人々もこうした場でつくったものへのフィードバックをしながら新しいアイデアを一緒に模索します。
エンジニア、デザイナー、モデラー、ケアに携わる人々、近隣在住の家族など、みんなでつくり、試し、考え、つくる、サイクルを継続します。

プロトタイプの例

これまで開催されてきたメイカソンでのプロトタイピングの例を下記に紹介します。
それぞれのチャレンジの経過は別途右コラムのリンク先をご覧ください。

片手でも返しやすいフライ返し−2018.09.29@おおたFab

第1回目のメイカソンで製作されたプロトタイプ。片麻痺の当事者によるニードは好きな料理の際、片手でも大きなものを返せるフライ返し (ターナー)。
メイカソン後も幾度かの Re-design Café を経て大量の亜種が製作され続けている。
この進化系統図ともいう時系列は、2019年5月から9月まで開催された日本科学未来館メディアラボ第21回展示「ぴったりファクトリ」でも展示紹介された。


日本科学未来館で開催された「ぴったりファクトリ」展で展示されたフライ返しのリデザイン過程。

実際に使用して検証しながらアイデアの検討を進める。

笑顔を誘う肉球スイッチ−2018.09.29@おおたFab

脳性麻痺のため寝たきりの生活を強いられている小児のための道具。日々の暮らしのなかでインタラクションを楽しむために、様々なスイッチごとに異なるアウトプットが得られるようにデザインされている。この道具に親しむこと自体が暮らしのなかでの大事な<作業>となってきた。


SONY MESH を活用してのプロトタイピング。

ユニコーンバンド(頭部の動きでPCのキーボードを押す道具)−2019.03.24@横浜コミュニティデザインラボ

脳性麻痺で四肢に不自由を抱えながら30年を超えるPCユーザー歴を誇る当事者のニードを解決するための道具。
従来は口に加えた棒状のものでキータイプをしてきたが、不自由なことが多いのでほかの方法を検討したい、というもの。
メイカソンの現場では、まずメガネに装着する方式が検討された。その後、オリジナルのヘッドバンドにキータイプ用の道具を取り付ける案の検討がはじまった。
Re-design Café での改善が続き、最新版はねじ込み式のパイプを連結することで長さを変えられるものになっているほか、導電性フィラメントを採用することで、タッチパネルのスタイラスとしても活用されている。
特筆すべきは、これをきっかけにこのニードノウアは 3D モデリングに取り組み始め、この道具を使ってほかのニードノウアの課題解決に取り組み始めたことである。


当初、メイカソンの際はメガネに取り付けるアイデアだった。

幾度かのリデザインを経た状態だが、まだ満足いく状態ではない。

ねじ込み式のユニコーン。持ち運び時には短くすることができる。

ねじ込み式のユニコーンを装着した様子。長さの調節ができるようになった。

張り子製作時の下地づくり、胡粉塗りを助ける道具−2019.09.14-15@Good Job! Center KASHIBA

脳性麻痺のため右半身が不自由な当事者のニード。この当事者はこのメイカソンの会場となった障害者就労支援施設に通っているが、片手での作業しかできないため、限られた役目しか与えられずにいる。
この施設では張り子製作が大きな事業となっており、その製作に携わりたい、という思いからはじまっている。
メイカソンの現場ではその場でつくれるものでプロトタイピングがなされ、その後、時間がかかる3Dプリント品や部品が揃う形でリデザインされてきている。


メイカソンの会場ではアルミのフラットバーを曲げたものに3Dプリントしたパーツを取り付けて問題を解決することに取り組んだ。

メイカソン後、時間をかけて3Dプリントした別のアプローチ。

フォアアーム・ピック(前腕の動きだけでギターを弾く道具)−2019.09.14-15@Good Job! Center KASHIBA

脳性麻痺のため、四肢に障害がある当事者のための道具。現在大学生でバンド活動をしており、車椅子に乗った状態でボーカルを担当している。本人の夢はギターボーカルとしてかっこよくステージをこなすこと。
ピックで弾きたい、という希望を叶えるために保持が難しい指ではないところでピックを固定する装具を製作した。


ピックは必ずしも指で持つ必要はない。かっこよく弾けることが大事。

文字が重ならずに書けるようになる道具−2019.10.20@品川産業支援交流施設 SHIP

ニードをお伝えいただいた際に送られてきた画像

文字を書く際、どうしても重なってしまい、可読性に問題が生じてしまう小学生のニード。このチームのファシリテータは以前のメイカソンでニードノウアとして参加した障害当事者が務めた。
彼の幼少時の経験から文字を書く際にガイドとなり、書いていることを少し俯瞰的に見られる道具が必要なのではないかという結論にいたり、いくつかのプロトタイプを試した。
ニードノウアの小学生はこの道具を手にした後、見違えるように書くことが上達し、何度も文字を書くことに取り組んでいたのが印象深い。


この日手に入れたガイドにより、文字の形がはっきりとわかるようになってきた。自分自身が上達していることが認識でき、練習し続けていた。

メイカソン後、同じデジタルデータをアクリルでレーザー加工したもの。このように様々なバリエーションを作成することができる。